「これからも仕事は頑張っていきたいけれど、子供も欲しい」
「これからは家族との時間も大切にしたいけれど、今の仕事も続けたい」
一億総活躍社会とも呼ばれ、男女に関わらず働き方が多様化している現代。
政府主導で副業が推進されるなど、「働く」という一つの言葉には収まらないほど、我々に与えられている選択肢は増えてきています。
働き方の幅が多様化している今だからこそ、常に自身のキャリアイメージを明確にしておく必要があります。日々迫り来る選択肢に対して、どのような状況でも自分でキャリアを選択していく力こそが求められているのではないでしょうか。
今回は自身でキャリアを選択する力、「キャリアデザイン」の意味や考え方についてご紹介していきます。
キャリアデザインとは
「キャリアデザイン」とは、思い描いている理想の将来像を実現するために、どのような仕事・職業や働き方が相応しいかを考え、目標設定を行い、実現に向けて設計することを指します。
ここでの「キャリア」とは単なる職歴ではなく、人生における仕事の位置付けという意味で、「生き方」の一部として仕事や働くことを捉えていきます。
キャリアデザインとは、まさに「豊かな人生」そのものに直結する考えであることをよく理解しておいてください。
また、キャリアデザインに関連して「キャリプラニング」についても理解を深めておく必要があります。キャリアプラニングについてはこちらの記事で紹介しています。
今日の日本においては、政府は将来の労働人口の減少に備えて、女性活躍推進・一億総活躍社会の実現を掲げています。
古くから提唱され、当たり前であった終身雇用制度についても、今後は維持が難しくなることが予想されています。
就職してから40年間、一つの企業で勤め上げ、定年後は年金を受給してのんびり老後を送ることも、ごく一部の富裕層以外には実現が難しくなることでしょう。
極端な言い方をすれば、国は国民一人ひとりの豊かな生活を保証できなくなってきています。
そのため、自分自身の人生はそれぞれで責任を持ち、理想の将来を実現するための意思決定や行動を自分自身で選択してかなければなりません。
キャリアデザインの重要性
時代の変遷により、終身雇用の慣習が薄まってきた、終身雇用を保証できなくなってきたことは明らかではありますが、まだまだ終身雇用制度が適用されている、方針として残っている企業は少なくありません。
では、なぜこのタイミングで、今まで耳にしなかった「キャリアデザイン」という言葉が叫ばれるようになってきたのでしょうか。
年功序列・終身雇用制度の廃止が加速
実は年功序列制度や終身雇用制度を採用している企業は古くからの中小企業に多く、誰もが知っているような国内の大企業は次々とこれらに関わる制度の廃止、もしくは制度を否定する(無効にする)新たな規定の策定を行なっています。
2010年代中盤から、ソニーや日立製作所、パナソニックなど、日本を代表する大企業が年功序列制度そのものの廃止や年功序列を前提としない新制度の策定を推進しています。
勤続期間の長さに比例して給与が上昇していたこれまでの状況を、企業側としても維持することが困難になってきています。
将来の理想像やゴールイメージを明確にしながら、現状のスキルや市場価値と向き合い、能動的(主体的)にキャリアをデザインしていくこと重要です。
(参照;日立製作所、管理職の年功序列を廃止へソニーやパナソニックも検討 )
(日本経済新聞 ソニー、10年ぶり人事・賃金改革 高コスト是正 )
日本独自のキャリア形成の難しさ
これまで多くの企業が「人(個人)」に依存した雇用形態を採用してきました。
それが、年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」です。
メンバーシップ型の雇用によって採用されている社員は、新卒一括で採用がなされ、職種や勤務地に際限がないため、企業側としては自由な人員配置を実現できることと引き換えに、一度仕事を離れてしまうと個人のキャリア実現が難しいのがデメリットがあります。
特に出産などの特別なライフイベントを控える女性にとっては、子供を産むこと、あるいは結婚や子育てを行うことが、キャリアを描く妨げになってしまっていたのです。
理想のキャリアを実現したくてもできない人が増えてしまった結果として、働き手不足が加速しているとも捉えられるでしょう。
今後、ますます加速を続ける少子高齢社会を前に、あなたが望む人生設計に対応できるように、若いうちからキャリアデザインを行っておく必要があります。
企業側が提供する仕事へのモチベーション向上施策
現代社会は、従来のように勤続を続けていれば昇進・昇給ができるわけではありません。社員の仕事に対するモチベーションを高く保ち続けることが企業の課題の一つとなっています。
そこで、キャリアデザインを活用して、社員がそれぞれ主体的に自らのキャリア作りを行うことで、社員のモチベーション向上と組織の活性化へと繋げようとしています。
皆さんの会社にも、希望すれば他部署への異動が可能となる社内公募制度や社内FA制度と呼ばれる制度が設けられているかもしれません。それらの制度はこうした時代背景に基づいたキャリア デザイン活用のための制度である可能性が高いでしょう。
雇用形態や働き方の多様化
近年、正規雇用だけでなく、非正規雇用が一般的になり、雇用形態や働き方が多様化しています。IT技術や通信インフラの発達により、どこにいてもパソコンとインターネット環境さえあれば、仕事ができる環境も珍しくなくなりました。
「フリーランス」と呼ばれる人材に対して、ネットワーク上で不特定多数の人材に業務を依頼できるサービス「クラウドソーシング」(リモートワーク)が有名になったのも、この流れが関係しています。
企業側はコストを抑えて業務をアウトソーシング(外注)でき、働き手はこれまでの単一的な雇用関係に縛られず、描くキャリアに合わせた自由な働き方ができるようになりました。
このような自由な働き方が広まったことによって、過疎地への人口流動が起こり、地方の活性化にも効果があると期待されています。
しかし、自由に働けるというメリットは、スキルがない人材はいつまでも収入が安定しないというデメリットと相反しています。
そのため、現職の担当業務で通用するスキルではなく、社会に求められている需要の高いスキルを備えておく必要があります。需要の高いスキルを身につけておくことで、自由度の高い働き方を積極的に実践しやすくなるでしょう。
キャリアデザインを形成するために
キャリアデザインを形成するには大きく2種類の方法が存在しています。
個人で取り組む方法と、所属企業のサポートを受けて取り組む方法の2種類です。
企業側が社員にキャリアデザインをサポートする方法としては、前述の「社内FA制度」や「社内公募制度」が存在しています。
とはいえ、キャリアデザインに関する制度が充実している企業はまだまだ少なく、制度としては存在していても支援体制が十分ではないことも多いのが現状です。
個人で実践できるキャリアデザインの方法と手順とは?
キャリアデザインを企業のサポートを受けて形成する場合でも、個人で取り組む場合でも、前提として「将来、どのようなキャリアや生活を実現したいか」を明確にしておくことが必須です。
将来の理想像を明確にする
キャリアデザインを形成するうえで、まず一番はじめに実施していきたいのが、将来の自分がどういった働き方で、どのような仕事・職務についているかを明確にイメージすることです。
また、所属企業ではどのような役職(ポジション)なのか、何人でプロジェクトに取り組んでいてあなたは何を担当しているのか、細かい部分までイメージできる程良いでしょう。
その際、世の中ではどのようなスキルを持っている人材が高いのか、経済状況はどうか、外部要因についても想像してみてください。
目標達成に必要な条件を明確にする
前述の通り、将来の理想像を明確にしたら、どうすれば理想像の自分になれるのか、そのための条件を抽出しましょう。
例えば、資格であれば80点以上であるとか、エンジニアの方であれば丸という言語を用いて何ができるレベルになっているのか、または営業としてどのくらいの売上をあげているのか、客観的かつ定量的に判断できる条件を設定してください。
設定した条件をいつまでに達成するのかを明確にする
ここまで進めば、おそらくほとんどの方が将来に対して、理想イメージの解像度が上がってきた状態かと思います。最後に、上記の作業で定めた各項目について、いつまでに達成するのかを明確しておきましょう。
キャリアデザインの場合は、自身の人生を考えるという位置付け(ニュアンス)でもあります。
数ヶ月から半年後、1年後、3年後、5年後と未来に対して期限を設けても良いのですが、あなたの人生における翁ライフイベントと照らし合わせながら期限を設定すると、より現実的な条件設定となり得るでしょう。
例えば、「28歳で結婚して、30歳には子供が欲しい。その場合には、28歳の時点でAというスキルを身につけて、比較的家にいれる時間を長くしておく必要があるな。」など、私生活やプライベートに関する部分まで総合的に考えて、キャリアをデザインしてきましょう。
企業が行う社員向けのキャリアデザインの支援とは?
企業によっては、キャリアデザインに関する制度の整備が進められており、積極的に社員をサポートしてくれる企業も増えてきているようです。
企業側としても組織を活性化する狙いがあり、うまく活用できれば企業とその社員、どちらにとってもメリットをもたらしてくれることでしょう。
現在は、まだ社内に制度がない企業にお勤めの方も、この機会に一度予習をしておきましょう。
また、キャリアデザインという概念が浸透していないだけで、既存の研修や制度が十分に活用できる場合もあります。意外と、あなたの会社にも活用できる制度があるかもしれません。
研修制度・カウンセリング制度
研修やカウンセリングは社員が主体的に自らのキャリアを考えさせる機会を与えてくれます。
特に新入社員研修や若手研修、マネジメント専用研修などは、それに該当している可能性が高いです。このような研修は参加が必須の場合も多く、定期的に自身の考えやスキルを見つめ直す良い機会となるでしょう。
キャリア・スキル開発用の研修制度
研修のなかでも特定のスキル開発に特化した研修が該当します。特に、公募型の社内公募制度や社内FA制度は、社内の誰でも行使することができる開かれたスキル開発制度でしょう。
※企業によっては、応募に一定の条件が設けられている場合もあります。
もちろん、制度を利用したからといって、確実にあなたが思い描くキャリアをデザインできるとは限りませんが、一般的に公募制度を受講できた場合のキャリアの実現度は高まる傾向にあります。
あなたが知らないだけで社内にもこういった制度がある場合は非常に多いです。気になった方はいますぐ制度を調べるところからスタートしましょう。
まとめ
今後、ますます「個人の(市場)価値」が重要視される時代に突入していきます。
働き方の多様化が進み、これまでよりも多くの選択肢を持った私たちが今できることは、自身の人生について、キャリアについて主体的に考えることです。
そして、自ら明確なキャリアデザインを描き、実践していくことではないでしょうか。